自走式立体駐車場の解体の流れと費用|機械式との違い・工法・手続きを解体業者が解説

<解体業者が教える3つのポイント>
- 自走式と機械式の立体駐車場の違い(解体にどう影響するか)
- 自走式立体駐車場の解体の流れと、工法の選び方
- 解体の前後に必要な手続きと、費用を左右する要因
自走式立体駐車場と機械式駐車場の違い

自走式立体駐車場とは、ドライバーが自分で運転してスロープを上り下りし、各階の駐車スペースに車を停める駐車場です。一方、機械式駐車場は、車をパレットに載せ、装置で上下・左右に動かして格納します。
同じ「立体駐車場」でも、解体するときの考え方は大きく異なります。
| 比較項目 | 自走式立体駐車場 | 機械式駐車場 |
|---|---|---|
| 車の動かし方 | ドライバーが運転してスロープを上る | 装置が車を運ぶ |
| 主な構造 | 鉄骨の柱・梁と、コンクリートなどの床 | 鉄骨のフレームと、パレット・リフトなどの装置 |
| 法律上の扱い | 建築物(自動車車庫) | 多くは工作物 |
| 解体の中心 | 床スラブ(コンクリートの床)と鉄骨の解体 | 装置・パレットの撤去と、鉄骨の解体 |
| 主な廃材 | コンクリートがら、鉄筋、鉄骨 | 鉄骨・鋼材、作動油 |
| 解体後の手続き | 建物滅失登記が必要(登記がある場合) | 通常は不要 |
いちばん大きな違いは、自走式は「建物」だということです。コンクリートの床が何層もあるため、鉄を切って降ろすだけの機械式と比べて、出てくる廃材の量も、必要な重機の大きさも変わります。
機械式駐車場の解体については、次の記事で詳しく解説しています。
- 小規模な機械式駐車場の撤去と平面駐車場化:立体機械式駐車場の解体の流れを事例で紹介
- 機械式駐車場の撤去の見積り内訳:立体機械式駐車場の解体費用
- 大型のタワー式の解体:タワーパーキングの解体の流れ
自走式立体駐車場の種類と、解体への影響

自走式立体駐車場は、床の形と床の材料によって、解体の手間が変わります。
床の形による違い
| 種類 | 特徴 | 解体への影響 |
|---|---|---|
| フラット式 | 各階の床は水平で、階と階の間を専用のスロープでつなぐ | 床が平らで、重機を載せやすい。階ごとに順番に解体を進めやすい |
| スキップ式 | 半階ずつずらした床を、短いスロープでつなぐ | 床の高さが交互に変わるため、解体の順番や重機の動き方の計画が細かくなる |
| 連続傾床式 | 床全体がゆるやかに傾き、らせん状に上っていく | 床そのものが傾いているため、重機を載せて作業するときの安全対策が重要になる |
規模としては、1階と屋上の2層だけの「1層2段」から、5〜6層の大型のものまであります。層が増えるほど高さが出るため、使う重機や工法の選び方が変わります。
床の材料による違い
自走式立体駐車場の床は、主に次の2つの方法でつくられています。
- デッキプレート+コンクリート:波形の鋼板(デッキプレート)の上に、現場でコンクリートを流し込んだ床です。コンクリートを砕いたあと、鋼板と鉄筋を分けて取り出します
- PC床版(プレキャストコンクリート):工場でつくったコンクリートの板を、鉄骨の梁に載せた床です。板ごと吊り下ろせる場合もあれば、現場で砕く場合もあります
どちらの床なのかは、竣工図や現地調査で確認します。床の材料が分かると、解体の手順と、出てくる廃材の量の見通しが立てやすくなります。
自走式立体駐車場の解体の流れ

自走式立体駐車場の解体は、一般的に次の流れで進みます。
STEP1. 現地調査・図面の確認
竣工図や確認済証、認定書(国土交通大臣の認定を受けた製品の場合)などで、構造と床の材料を確認します。図面が残っていない場合も、現地調査で柱・梁・床の状態を見て判断します。
STEP2. 石綿(アスベスト)の事前調査と届出
建物の解体なので、石綿の事前調査と結果の報告、建設リサイクル法の届出などが必要です。詳しい届出の種類は「タワーパーキングの解体の流れ」でまとめています。
STEP3. 設備の撤去
精算機・発券機・ゲート、照明や配線、消火設備、看板、外周の防護柵や外装パネルを先に取り外します。精算機やゲートがリース品の場合は、返却の時期をリース会社と調整しておきます。
STEP4. 足場・養生の設置
外周に足場と防音パネルを設置し、コンクリートの破片や粉じんが外に飛ばないようにします。
STEP5. 床スラブの解体
重機の先に付けた圧砕機(コンクリートを挟んで砕くアタッチメント)で床を砕き、コンクリートがらと鉄筋・デッキプレートを分けます。粉じんを抑えるため、散水しながら作業します。
STEP6. 鉄骨の解体
柱や梁を、重機の鉄骨カッターやガス切断で切り、クレーンで吊り下ろします。鉄骨は、スクラップとして買い取れるよう、分けて搬出します。
STEP7. 基礎・杭の撤去と整地
地中の基礎を掘り起こして撤去し、土地を平らに整えます。杭を引き抜くか、残すかは、次の土地の使い方によって決めます(後述の「よくある質問」もご覧ください)。
地上解体と階上解体、どちらを選ぶ?

自走式立体駐車場の解体の工法は、大きく分けて2つあります。
| 工法 | 方法 | 向いている現場 |
|---|---|---|
| 地上解体 | 長いアームを持つ重機を地上に置き、上の階から順に崩していく | 敷地の周りに重機を置けるスペースがある現場。高さが重機のアームの届く範囲に収まる場合 |
| 階上解体 | 重機をクレーンで屋上に揚げ、上の階から1層ずつ崩しながら降りてくる | 敷地が狭く、周りに建物が近い現場。高さがあり、地上の重機が届かない場合 |
階上解体は、重機を建物の上に載せるため、重機の重さに床が耐えられるよう、下の階に支柱(サポート)を入れて補強しながら進めます。敷地いっぱいに建つ都市部の駐車場では、この方法を選ぶことが多くなります。
リプロでは、マンションの解体の現場などで、重機をクレーンで揚げる階上解体を行っています。作業の様子は「建機と解体のリプロチャンネル」でご覧いただけます。
どちらの工法にするかは、敷地の広さ、建物の高さ、前面の道路の幅、近隣の建物との距離を見て、現地調査のうえでご提案します。
自走式立体駐車場ならではの注意点
鉄骨の塗装と石綿(アスベスト)
鉄骨の古い塗装には、鉛などの有害な物質が含まれていることがあります。こうした塗装の上からガス切断をすると、有害な煙(ヒューム)が出るおそれがあるため、事前に塗装を調べ、必要に応じて塗装をはがしてから切断したり、切断の方法を変えたりします。
また、自走式立体駐車場には、鉄骨に耐火被覆のない製品も多い一方で、建てられた年代や増築した部分によっては、石綿を含む吹付け材や外装材、床の塗装材が使われていることがあります。事前調査でしっかり確認することが大切です。
営業中の施設での解体
商業施設や病院の駐車場は、施設を営業しながら解体することがあります。その場合は、次のような準備が必要です。
- 工事期間中に使う、代わりの駐車場の確保
- 利用者の通路と、工事車両の出入り口を分ける
- 作業時間を、施設の営業時間や混み合う時間とずらす
- 施設の利用者や近隣への、工事のお知らせ
工事の計画を、施設の運営スケジュールに合わせて組み立てることが、トラブルを防ぐポイントです。
建物滅失登記が必要
自走式立体駐車場は建築物なので、建物として登記されている場合は、解体後1か月以内に「建物滅失登記」を申請する必要があります(不動産登記法第57条)。申請するのは建物の所有者で、土地家屋調査士に依頼することもできます。
申請には、解体業者が発行する「取壊し証明書」などの書類が必要です。リプロでは、解体工事の完了後にお渡ししています。【要確認:取壊し証明書の発行】
機械式駐車場の撤去では、通常この手続きはありません。自走式ならではの手続きとして、覚えておいていただくと安心です。
自走式立体駐車場の解体費用を左右する要因

自走式立体駐車場の解体費用は、下記をご参考ください。
| 鉄骨造(S造)の費用の目安 | 金額 |
|---|---|
| 1坪あたりの解体費用(延床面積あたり) | 3万〜8万円 |
| 延床300坪の場合 | 900万〜2,400万円 |
| 鉄筋コンクリート造(RC造)費用の目安 | 金額 |
|---|---|
| 1坪あたりの解体費用(延床面積あたり) | 4万〜10万円 |
| 延床300坪の場合 | 1,200万〜3,000万円 |
※上記は目安です。実際の費用は、現地調査のうえでお見積りします。施工条件が厳しい現場では、坪10万円を超えることも想定されます。
費用が変わる主な要因は、次のとおりです。
| 要因 | 費用への影響 |
|---|---|
| 延床面積・層の数 | 面積が広く、層が多いほど、解体する量と工期が増える |
| 床の材料 | コンクリートの床は、砕いて分ける手間と処分費がかかる |
| 工法 | 階上解体は、重機を揚げるクレーンと床の補強の費用がかかる |
| 基礎・杭 | 杭まで引き抜く場合は、専用の重機と費用が必要になる |
| 石綿・有害な塗装 | 除去や対策が必要な場合は、その分の費用と工期が増える |
| 鉄スクラップの量 | 鉄骨の量が多いため、買取の金額を総額から差し引ける |
自走式立体駐車場は鉄骨の量が多いので、鉄スクラップの買取金額が総額に与える影響も大きくなります。ただし、鉄スクラップの価格は時期によって変わるため、お見積りでは「有価物の買取(差し引き)」として項目を分けてお示ししています。
鉄骨造の建物の費用の内訳は、S造の工場・大型倉庫の解体費用の記事も参考になります。
解体後の土地の使い方

解体後の土地の使い方によって、どこまで撤去するか、どう仕上げるかが変わります。
- 平面駐車場として使う:基礎を撤去したあと、舗装して区画線を引きます。舗装の選び方は「立体機械式駐車場の解体の流れ」で解説しています
- 更地にして売却する:杭や地中の基礎まで撤去するかを、売却先と相談して決めます
- 建物を建て替える:新しい建物の基礎の計画に合わせて、杭の扱いや整地の方法を決めます
解体工事の前に、解体後の予定をお聞かせいただけると、無駄のない工事の範囲をご提案できます。
よくある質問
Q. 上の階だけ解体して、層を減らすことはできますか?
A. 構造の検討が必要になります。大臣認定を受けた製品の場合は、認定の条件との関係も確認が必要です。メーカーや設計事務所と相談しながら進めることになりますので、まずは現地調査でご相談ください。【要確認:減築への対応】
Q. 施設を営業しながら、駐車場だけ解体できますか?
A. 可能です。利用者の通路と工事車両の出入り口を分け、作業時間を調整しながら進めます。代わりの駐車場の確保など、施設側でご準備いただくことも、計画の段階でご案内します。
Q. 建物滅失登記は、解体業者が申請してくれますか?
A. 申請するのは建物の所有者です。リプロでは、申請に必要な取壊し証明書などの書類をお渡しします。ご自身での申請が難しい場合は、土地家屋調査士への依頼もご検討ください。
Q. 杭は残しても大丈夫ですか?
A. 次の建物で杭を再利用する場合など、残すことがあります。一方、土地を売却する場合は、地中に残した杭が買主の工事の妨げになることがあるため、売却先と相談して決めることをおすすめします。【要確認:杭の引き抜きへの対応】
まとめ
自走式立体駐車場は、機械式駐車場とは違い「建物」として解体する必要があります。
- 床の形(フラット式・スキップ式・連続傾床式)と床の材料で、解体の手間が変わる
- 解体の中心は、コンクリートの床と鉄骨を分けながら崩していく作業
- 敷地や高さに合わせて、地上解体か階上解体かを選ぶ
- 有害な塗装・石綿の確認、営業中の施設での安全対策、建物滅失登記が必要
- 費用は面積と層の数が基本。鉄スクラップの買取で総額を抑えられる
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自走式立体駐車場の解体は、現地調査のうえでお見積りします。図面がない場合や、解体後の予定がまだ決まっていない場合も、お気軽にご相談ください。
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