解体工事の工期はどれくらい?マンション、ビルなどS造・RC造の規模別スケジュールと、工期が延びる5つの原因

2026年9月10日更新
目次
解体工事の「工期」には2種類ある

「解体にはどれくらいかかりますか?」というご質問をいただいたとき、私たちは必ず二つに分けてお答えしています。
ひとつは解体作業そのものにかかる期間。
重機が現場に入り、建物を壊し、廃材を搬出し、整地して引き渡すまでの日数です。
もうひとつが、契約から着工までの準備期間。
各種届出の法定期間、ライフラインの停止・引込管の撤去、近隣へのご挨拶、仮設計画といった、現場が動き出す前の工程です。
一般の方が想像する「工期」は前者ですが、実際のスケジュールで問題になるのは後者であることが少なくありません。
特にS造(鉄骨造)やRC造(鉄筋コンクリート造)といった非住宅の中・大型建物では、準備期間だけで1か月前後を見ておく必要があるケースがほとんどです。
土地の売買契約や新築の着工日が決まっている場合、この準備期間を読み違えると全体計画が崩れます。
この記事では、S造・RC造それぞれの規模別工期の目安と、準備期間の内訳、そして実際の現場で工期が延びる典型的な原因を、解体業者の立場から具体的に解説します。
【規模別】S造(鉄骨造)の解体工期の目安

S造は柱・梁が鉄骨で構成されているため、RC造に比べて建物本体の解体スピードは速いのが特徴です。
ガス切断と圧砕機で鉄骨を分割し、鉄スクラップとして搬出していきます。写真のように軽量鉄骨でしたら、重機の解体用アタッチメントで切断しながら速やかに進めていくこともできます。
一方で、外壁がALCパネルやサイディング、屋根が折板といった構成のため、部材ごとの分別解体に手間がかかる婆もあります。
| 建物規模 | 延床面積の目安 | 解体作業の工期目安 |
|---|---|---|
| 平屋の倉庫・小規模工場 | 〜200㎡(約60坪) | 2〜3週間 |
| 2〜3階建ての店舗・アパート・事務所 | 300〜500㎡ | 3〜5週間 |
| 中規模のS造マンション・ビル | 800〜1,200㎡ | 1.5〜3か月 |
| 大型工場・大型倉庫 | 2,000㎡以上 | 3か月〜 |
※当社の施工実績にもとづく目安です。立地条件・アスベストの有無・付帯工事の範囲によって変動します。
S造で工期を大きく左右するのがアスベスト(石綿)の有無です。
鉄骨造の建物は、耐火被覆として鉄骨に石綿が吹き付けられているケースがあり、これは「レベル1」に該当します。
この場合、建物本体の解体に入る前に、隔離養生を組んだうえでの除去作業が必要になり、規模によっては2週間〜1か月以上が本体工事の前に上乗せされます。
また、外壁がアスベスト含有のサイディングやスレート(レベル3)である場合も、手ばらしでの撤去が原則となるため、重機で一気に解体する場合と比べて日数がかかります。
【規模別】RC造(鉄筋コンクリート造)の解体工期の目安

RC造はコンクリートと鉄筋が一体になった構造で、S造と比べて同規模でも1.5〜2倍程度の工期を見ておく必要があります。
大型ブレーカーや圧砕機でコンクリートを破砕し、鉄筋を分離しながら進めるため、単純に取り壊す物量が多く、発生する産業廃棄物(コンクリートがら)の量も桁違いになります。
| 建物規模 | 延床面積の目安 | 解体作業の工期目安 |
|---|---|---|
| RC造の戸建て | 〜150㎡ | 3〜5週間 |
| 3〜5階建てのアパート・マンション | 500〜1,000㎡ | 2〜3か月 |
| 6階建て以上のビル | 2,000㎡以上 | 4〜6か月 |
| 地下階を有する建物 | ― | 上記+1〜2か月 |
RC造で特に注意していただきたいのが地下躯体(地下室・地下ピット)の存在です。
図面上は地下1階でも、実際には基礎が深く、山留めを行いながら掘削・撤去する必要が出てきます。
この工程は地上部の解体とはまったく別物で、期間も費用も大きく変わります。
さらに、住宅密集地や商業地では階上解体(上階に重機を揚重して上から解体していく工法)を選択することがあり、これは地上からの解体に比べて安全性・防音性に優れる反面、施工スピードは落ちます。
工法の選定そのものが工期を決めるとも言えます。
着工までに必要な準備期間|届出のリードタイム一覧
ここが冒頭で申し上げた「もうひとつの工期」です。法令上、着工前に定められた期日までに提出しなければならない届出がいくつもあります。
| 手続き | 期限 | 届出者 |
|---|---|---|
| 建設リサイクル法の届出(床面積80㎡以上の解体) | 着工の7日前まで | 発注者 |
| 特定建設作業実施届出(騒音規制法・振動規制法) | 作業開始の7日前まで | 元請業者 |
| 石綿事前調査結果の報告 | 工事開始前(電子報告) | 元請業者 |
| 特定粉じん排出等作業実施届出(アスベストレベル1・2) | 作業開始の14日前まで | 発注者(元請が代理可) |
| 道路使用許可・道路占用許可 | 数日〜1週間程度 | 元請業者 |
これに加えて、アスベストの事前調査そのものに時間がかかります。
有資格者による現地調査を行い、疑わしい建材があれば検体を採取して分析機関に出しますが、分析結果が出るまでに1〜2週間。
その結果レベル1・2の建材が見つかれば、そこからさらに14日前までの届出が必要になります。
つまり、「アスベストが見つかった時点で、着工は最短でも3〜4週間先になる」という前提でスケジュールを組む必要があるということです。
また、電気・ガス・水道といったライフラインの停止と引込管の撤去も、各事業者への申請から実際の作業まで2〜4週間かかることが一般的です。
特に高圧受電(キュービクル)のある建物は電力会社との協議が必要で、ここを後回しにすると着工日が動きます。
マンション・ビル解体の標準スケジュール例

RC造5階建て・延床800㎡程度のマンションを想定した、契約から引き渡しまでの標準的な流れです。
【第1〜2週】現地調査・アスベスト調査・見積確定
建物の構造、進入路、隣地との離隔、地中埋設物の有無を確認。並行してアスベストの事前調査と分析を実施します。
【第3〜5週】各種届出・近隣説明・ライフライン停止
建設リサイクル法、特定建設作業、石綿関係の届出を提出。近隣へのご挨拶と、必要に応じて事前家屋調査を行います。
【第6週】仮設工事
仮囲い、足場、防音シート・防音パネルの設置、散水設備の準備。大型解体では、この仮設の品質が近隣トラブルの発生率を左右します。
【第7〜9週】内部造作解体・アスベスト除去
建具、内装材、設備配管を手作業で撤去し、分別。アスベストがあればこの段階で隔離除去します。
【第10〜17週】躯体解体・廃材搬出
重機による躯体の解体と、コンクリートがら・鉄筋の搬出。工期全体で最も長く、最も騒音・振動が出る期間です。
【第18〜19週】基礎・地中埋設物撤去、整地、引き渡し
基礎躯体を撤去し、地中障害物がないか確認しながら埋め戻し。整地して完了検査、引き渡しとなります。
契約から引き渡しまででおおむね4〜5か月。「解体作業だけなら2〜3か月」という数字だけを見ていると、この差に驚かれる方が多いのです。
工期が延びる5つの原因

原因① アスベストのレベル1・2が見つかった
最も影響が大きい要因です。
前述のとおり、届出に14日、除去作業に建物規模に応じて2週間〜1か月以上。
事前調査の段階で見落とされ、着工後に発見された場合は工事を止めて調査からやり直しになるため、1か月以上の遅延につながることもあります。契約前の調査精度が、そのまま工期の確実性に直結します。
原因② 進入路・搬出条件の制約
前面道路が狭く大型車両が入れない、一方通行で搬出時間が限られる、商業地で夜間・早朝作業が規制されている
——こうした条件下では、10t車で運べるはずの廃材を4t車で小分けに運ぶことになり、搬出回数が2〜3倍に膨らみます。建物の大きさより、道路条件のほうが工期を決める現場は珍しくありません。
原因③ 地中障害物・地下躯体
掘削を始めてから、以前の建物の基礎、杭、浄化槽、井戸、産業廃棄物が出てくるケースです。
契約時点では想定できないため追加工事となり、撤去方法の協議・見積・承認のやり取りだけでも数日から1週間、実際の撤去でさらに数週間かかることがあります。
原因④ 残置物と設備機器の処理
工場やビルでは、建物のほかに機械設備、キュービクル、業務用エアコン、受水槽、消防設備などが残っています。
業務用エアコンや冷凍設備はフロン排出抑制法にもとづく回収が、蛍光灯安定器にはPCBの確認が必要で、いずれも専門業者による別工程です。
「建物を壊すだけ」と考えていると、この付帯工程がまるごと工期に上乗せされます。
原因⑤ 天候と処分場の受け入れ状況
粉じん飛散防止のため散水しながら作業しますが、強風時はアスベスト・粉じんの飛散リスクから作業を中止します。
台風や長雨の時期は稼働率が落ちます。
加えて、年度末(1〜3月)は処分場が混み合い、搬出待ちで現場が止まることもあります。繁忙期を避けられるなら、工期のブレは確実に小さくなります。
工期を守るために発注者側ができる3つのこと

① 図面と過去の工事履歴をできるだけ揃える
竣工図、設備図、増改築の履歴、以前の解体の記録。
これらがあるほど、地中障害物やアスベストの想定精度が上がり、追加工事による遅延リスクが下がります。
② アスベスト調査を前倒しで行う
売却や建替えの検討段階で調査だけ先に済ませておけば、契約後すぐに届出に進めます。
これだけで2〜3週間短縮できるケースがあります。
③ 「工期に余裕のない条件」を最初に伝える
新築の着工日、土地の引き渡し日、テナントの退去期限。
制約条件を先に共有していただければ、工法・重機・人員配置を逆算して計画できます。着工後に「実は来月末までに」と言われるのが、最も対応の難しいパターンです。
解体工事の工期に関するよくある質問
Q1. 契約してから着工まで、最短でどれくらいかかりますか?
A. アスベストが無い、あるいは事前調査がすでに完了している建物であれば、最短で2週間程度です。建設リサイクル法の届出(着工7日前まで)と特定建設作業の届出(作業開始7日前まで)が法律で定められているため、これより早く重機を入れることはできません。加えてライフラインの停止・引込管の撤去に2〜4週間かかるため、実務上は契約から3〜4週間後の着工とご案内することが多くなります。アスベストのレベル1・2が見つかった場合は、届出の14日前ルールが加わるため、さらに2週間程度を見込んでください。
Q2. 雨の日は工事が止まりますか?工期に影響しますか?
A. 小雨程度であれば作業は続行します。むしろ解体工事では粉じん飛散を防ぐために散水しながら作業するため、雨は必ずしもマイナスではありません。ただし、強風時は中止です。粉じんやアスベストの飛散、資材の飛散リスクがあるためで、これは安全管理上の判断として譲れません。台風シーズンや長雨の時期は稼働率が落ちるため、当社では見積時の工程表に数日分の予備日を織り込んでご提示しています。
Q3. 土日や夜間も作業してもらえますか?工期は短縮できますか?
A. 現場の立地によります。商業地や幹線道路沿いで、平日昼間の搬出が制限される現場では、むしろ夜間作業が前提になることもあります。一方、住宅地では騒音規制法・振動規制法により特定建設作業の時間帯(原則として午前7時〜午後7時、1日10時間以内など)や日曜・休日の作業が制限されており、自治体の条例でさらに厳しい場合もあります。「土日も動けば早く終わる」とは限らず、規制と近隣関係を踏まえた判断が必要です。
Q4. 工期が予定より延びた場合、費用も追加になりますか?
A. 延びた理由によります。天候や当社側の都合による遅延であれば、原則として追加費用はいただきません。一方、地中障害物の出現、事前に把握できなかったアスベスト、残置物の追加といった「契約時の想定外」による延長は、追加工事として別途お見積りとなります。だからこそ、契約前の現地調査でどこまで想定を詰められるかが重要です。見積書に「何が含まれていて、何が含まれていないのか」が明記されているかを必ずご確認ください。
Q5. アスベストがあると、具体的にどれくらい工期が延びますか?
A. 建材のレベルによって大きく変わります。吹き付け石綿などのレベル1は、隔離養生・負圧除じん装置の設置・除去・清掃という一連の工程が必要で、規模に応じて2週間〜1か月以上。保温材や耐火被覆材のレベル2も同様に隔離が必要です。成形板などのレベル3は、手ばらしでの撤去となるため重機解体に比べて数日〜2週間程度の上乗せというイメージです。加えて、レベル1・2は作業開始の14日前までに届出が必要なため、その日数も加算されます。
Q6. 工期を短くする方法はありますか?
A. 現実的に効果があるのは3つです。ひとつ目は、アスベスト調査を売却・建替えの検討段階で先に済ませておくこと。これだけで2〜3週間短縮できることがあります。ふたつ目は、残置物をあらかじめ処分しておくこと。産業廃棄物として業者が処理するより、ご自身で一般廃棄物として処分できるものを減らしておくほうが、費用も日数も抑えられます。三つ目は、年度末(1〜3月)を避けること。処分場の混雑と業者の繁忙期が重なり、搬出待ちで現場が止まりやすい時期です。
Q7. 解体中、隣の建物やテナントは通常どおり営業できますか?
A. 基本的には可能です。ただし、連棟や近接した建物の場合は、事前の家屋調査と養生計画が必須になります。振動によるクラックの発生や、粉じんによる汚損が起きたときに「解体工事が原因か否か」を判断できるようにしておくためです。テナントビルの一部解体や、隣接する店舗の営業が続く現場では、搬出時間帯を調整したり、防音パネルの仕様を上げたりといった対応を工程に織り込みます。この調整分は工期に反映されます。
Q8. 遠方に住んでいますが、工事の進捗はどう確認できますか?
A. 当社では現場写真による定期的なご報告を行っています。地方在住のオーナー様や、法人の管理部門が別拠点にある案件も多いため、着工前・内部解体完了時・躯体解体完了時・整地完了時といった節目ごとに記録を残し、共有しています。立ち会いが難しい場合でも工程の進捗が把握できるようにしておくことは、追加工事が発生した際の判断をスムーズにするうえでも重要です。
Q9. 解体が終わったら、建物滅失登記はいつできますか?
A. 工事完了後、解体業者から取毀証明書(建物滅失証明書)と会社の登記事項証明書・印鑑証明書を受け取り次第、申請できます。滅失登記は建物が滅失した日から1か月以内に申請する義務があり、怠ると過料の対象となる可能性があります。また、登記が残ったままだと土地の売買や新築の建築確認に支障が出ることがあります。引き渡し時に必要書類が揃うかどうかも、業者選びのチェックポイントのひとつです。
まとめ|「工期が読める見積書」が良い業者の条件
解体工事の工期は、建物の構造と面積だけでは決まりません。
アスベスト、進入路、地中、設備、季節——複数の変数が絡み合って初めて日数が出ます。
だからこそ、工事開始段階で、もし施主様がご希望された際に、「◯月◯日着工、内部解体に◯週間、躯体に◯週間、引き渡しは◯月◯日」と工程表を提示できる業者かどうかが、そのまま信頼性の指標になります。
逆に、工程表の作成がなく、「だいたい2か月くらいですね」としか言えない業者さんは、スケジュールが大きくずれ込む可能性があります。
この辺りは、見積もり段階では施主様には掴みづらいはずですので、見積もり段階から少しでも工事の進め方について業者さんに質問して、どこまで工期について真剣に考えているか把握なさってみてください。
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解体工事の工期の流れは掴めましたでしょうか?
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・一人親方や数人規模の業者が多いため、施工技術にムラがある場合がある
・解体費用は安くなる一方で価格競争になる分、施工管理が煩雑になる場合がある
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